サイバー脅威
統合DFIR(デジタルフォレンジック及びインシデント対応)ツールによるサイバーフォレンジックの効果
デジタルフォレンジックおよびインシデント対応(DFIR)を統合したツールであるTrend Vision One – Forensics™による効果を実証する活用事例を紹介します。
企業や組織のセキュリティチームは、ますます巧妙化する脅威に直面し、サイバー犯罪活動に対抗する「デジタルフォレンジックおよびインシデント対応(DFIR)」の重要性が一層強調されています。残念ながら、多くの企業や組織は、証拠収集やインシデント対応に適した強力なDFIRツールを持っていないか、既製のソリューションに依存しており、それらにはそれぞれ固有の問題があります。セキュリティおよびインシデント対応の専門家が業界全体で不足しているため、企業や組織における緊急インシデントの調査がより困難になっています。
本稿では、トレンドマイクロのインシデント対応チーム(IRチーム)と顧客側のセキュリティチームがTrend Vision One – Forensics™の導入前に直面していた課題と、導入後に実現した変革的な改善について紹介します。
Trend Vision One – Forensics™導入前の課題
コロンビア市のセキュリティチームにおける課題
米ミズーリ州の中心部に位置するコロンビア市は、州で四番目に大きな都市です。学術的な活動、文化的な活気、そして豊富なアウトドアレクリエーションの機会が融合したこの都市は、活気ある大学中心の環境を求める学生や専門家、愛好家たちを惹きつけています。
その活動的な雰囲気にも関わらず、コロンビア市政府のサイバーセキュリティチームは小規模で運営されており、ごく少数の献身的なエンジニアが数千人のユーザとエンドポイントを監視する重要な任務を担っています。
Trend Vision One – Forensics™を導入する前、コロンビア市のセキュリティチームは、PowerShellスクリプトや手間のかかる手動プロセスに大きく依存してインシデントの証拠収集を行っていました。このアプローチは、同市の小さなチームに過大な負担を与え、結果として彼らは多くの場合、関連するエンドポイントを完全に消去したり、再イメージ化する必要に迫られていました。
トレンドマイクロ インシデント対応チームにおける課題
インシデントの影響を効果的に軽減するためには、トレンドマイクロのようなグローバルに展開した経験豊富なインシデント対応サービスチーム(IRチーム)からの迅速かつ戦略的なサポートが必要となります。侵害の起源を特定し、運用の復旧指導から影響の最小化に至るまで、トレンドマイクロのIRチームは24時間体制でお客様のセキュリティとレジリエンスを守っています。
Trend Vision One – Forensics™導入前、トレンドマイクロのIRチームも、大量のログを収集する主要な証拠収集ツールを使用していましたが、既知および未知のマルウェアや攻撃を識別するためのスレットインテリジェンスやマルウェアスキャンが不十分な場合もあります。そのため、分析活動は、大量のデータを精査するケースの場合、干し草の山から針を探すような作業と言えました。
また、世界規模に展開している企業や組織をサポートする場合、グローバルに展開しているトレンドマイクロでも、インシデント対応時に世界中の他のIRチームとの連携がボトルネックとなる場合もありました。各地域のIRチームは、証拠収集のために顧客の現地に出向くことが必要なケースもあり、こうした状況は、インシデント発生時の対応時間遅延を招く事態にもつながっていました。
Trend Vision One – Forensics™導入の効果
コロンビア市のセキュリティチームにおける利点
2023年9月、コロンビア市はネットワーク上において異常な挙動に直面し、包括的な調査が必要とされました。Trend Vision One – Forensics™の導入状況は、まだプレビューの段階でしたが、同市のセキュリティチームとトレンドマイクロのIRチームは、すぐに Trend Vision One™プラットフォームのコンソールを通じて活用することにしました。そしてTrend Vision One – Forensics™の導入により、エンドポイントや証拠の種類を選択するなどの簡単な操作で、数分内に証拠報告書が生成され、ファイルのタイムライン、ネットワークデータ、ユーザ活動、イベントログなどの重要な詳細が提供されました。これにより、ユーザのコンピュータに物理的にアクセスすることなく、必要不可欠なインシデントデータの効率的な取得が可能となり、調査プロセスが大幅に合理化されました。
このようなTrend Vision One – Forensics™の利用により、インシデント対応の効率と能力が顕著に向上しました。手間がかかるPowerShellスクリプトの作成と待機のプロセスは今や過去のものです。その結果、顧客側のセキュリティチームとトレンドマイクロのIRチームは、より迅速かつ包括的なインシデント調査を行うことが可能となり、運用の機動性が大幅に改善されました。実際、こうしてコロンビア市は、より戦略的な取り組み、例えば市のリスクコンプライアンスプロトコルの強化などに貴重な時間を割くことができ、堅牢でレジリエントなセキュリティフレームワークを確立することが可能になりました。
トレンドマイクロ インシデント対応チームにおける利点
2022年第4四半期に、トレンドマイクロのインシデント対応(IR)チームのリーダーシップはTrend Vision One – Forensics™を製品のプラットフォームに統合することを提案しました。その後の四半期を通じて、IRチームは製品の仕様に重要な意見を提供し、初期テスターとして活躍しました。IRチームは、Trend Vision One – Forensics™の実装により、以下のような即効性のある利点を確認しています。
- IRタスク開始の遅延解消:Trend Vision One – Forensics™の導入により、IRチームはタスクを遅れることなく開始できるようになりました。Trend Vision Oneプラットフォームを活用することで、顧客のオフィスに物理的に出向いてIRツールを展開する必要がなくなりました。各インシデント対応タスクの開始前に多くの時間が節約されています。トレンドマイクロのIRチームは、Trend Vision One – Forensics™により、証拠収集、調査、対応行動に遠隔でシームレスに実行できます。また、最新のTrend Vision Oneプラットフォームにまだ移行していない顧客のためにも、IRチームは、迅速にエンドポイントセンサーの展開と証拠収集を支援し、わずか15分でトリアージを行うことが可能となりました。
- 証拠収集作業の自動化:Trend Vision One – Forensics™がTrend Vision Oneプラットフォームとシームレスに統合されることにより、IRチームは、セキュリティプレイブック内で特定の基準を満たすと自動的に証拠を収集するルールを設定できます。この自動化は、証拠収集に必要な時間を大幅に削減しつつ、手動での証拠回収オプションも維持します。
- グローバルな協力を可能にする統一プラットフォーム:Trend Vision Oneプラットフォームのクラウドネイティブアーキテクチャにより、世界各地のIRチームがTrend Vision One – Forensics™アプリケーションを通じて同じワークスペースやウォールルーム内でシームレスに協力し、世界中のインシデントに効果的に対応できます。このツールの向上した可視性とユーザーフレンドリーなインターフェースはグローバルチームの効率を大幅に高めています。
結論
Trend Vision One – Forensics™は、SOCアナリストやDFIR専門家がセキュリティ調査をスムーズに行うためにプラットフォーム内で直接構築されたアプリケーションです。Trend Vision Oneのコンソールを使用して、エンドポイントからデジタル証拠を収集し、収集したデータをワークスペースで整理し、YARAやosqueryのような統合されたクエリやスキャンを使用してエンドポイントの迅速なトリアージが可能です。
Trend Vision One – Forensics™は、展開が不要であり、ネイティブセンサーとシームレスに連携し、運用の複雑さを軽減し、より速く、より効果的なフォレンジックとインシデント対応を実現します。こちらのお知らせも合わせてご参照ください。
参考記事:
Integrated DFIR Tool Can Simplify and Accelerate Cyber Forensics
By: Joyce Huang
翻訳:与那城 務(Core Technology Marketing, Trend Micro™ Research)