セキュリティ統合のメリットと戦略的アプローチ
サイロ化の解消に向け、セキュリティを統合することで、より効率的にセキュリティを管理する取り組みが活発になっています。統合のメリットとアプローチのヒントを解説します。
セキュリティ統合の鍵となる2つの要素
攻撃対象領域が拡大するにつれて、特定のリスクや脅威に応じた多様なセキュリティソリューションが登場しています。その結果、コンソール、データ、アラートの混乱を引き起こし、セキュリティチームの対応速度が遅れ、攻撃への効果的な対応能力が損なわれているのが現状です。
セキュリティにおける複雑さを最小限に抑えるために、多くの組織は、ソリューションやベンダー総数の合理化に熱心です。CISO(最高情報セキュリティ責任者)は、セキュリティ統合が、チームの効率を高め、コストを節約し、セキュリティ体制を改善することを理解しています。一方で、それが単純ではないことも知っています。
まず、考慮しなければならないのが、既存の資産です。単一のソリューションが全てのセキュリティ要件を満たすことは難しいため、複数のソリューションが必要になります。また、既存のセキュリティツールで、特にセキュリティチームの業務に深く組み込まれている場合、廃止することが簡単ではありません。しかし、既存の資産を、すべてゼロにする必要はありません。通常、セキュリティの統合は、統合において中核となるセキュリティプラットフォームの導入を意味します。このプラットフォームには、サードパーティからのデータを受信し、またそれらのAPIにコマンドを送信できる機能が必要です。
また、将来的なリスクの変化に合わせて新しいソリューションを追加していくことも考慮する必要があります。TechTargetによると、マルチクラウドセキュリティ、リモートアクセス、ゼロトラストの要件に対応するために、今後も新しいセキュリティ技術や専用ツールが開発され続けるとしています。また、AI関連のセキュリティリスクへの対処のため、新たなツールが登場する可能性もあり、それらはAIベースのものになるでしょう。
つまり、混乱を最小限に抑えたセキュリティ統合のためには、既存資産と将来的なソリューションを考慮したサードパーティの統合をサポートできるプラットフォームと、セキュリティをシンプル化していく段階的なアプローチが必要です。
プラットフォーム導入によるセキュリティ統合のメリット
様々なセキュリティソリューションが普及する現在、最大の問題の一つは、セキュリティチームやセキュリティオペレーションセンター(SOC)が、組織における脅威の全体像を一元的に把握できないことです。何が起こっているのかを理解するためには、複数のディスプレイやダッシュボードを絶えず確認する必要があります。その結果、多数の関連性のないアラートに対応しなければならず、これに時間と労力を割かれ、重要なアラートを見逃すリスクが高まります。
セキュリティプラットフォームでセキュリティを統合することは、こうした運用問題の解決策になります。セキュリティプラットフォームは、より一元的な可視性を提供し、洞察に富んだ報告とリスクベースの意思決定をサポートします。また、組織全体の環境を可視化することは、既存資産の有効性の検証にも役立ちます。重複している、使われていない、または十分に活用されていないツールを明らかにし、利用価値を高め、同時にコスト削減に寄与するでしょう。
また、セキュリティプラットフォームは自動化というメリットも提供します。脅威の特定と対応が加速し、SOCチームの効率は大幅に向上するでしょう。多様なソリューションを統合し、セキュリティを一元的に管理することで、組織のDXを促進するためのセキュリティ基盤が確立されるでしょう。
コンプライアンス対応の改善、強化にも貢献します。セキュリティ基準への対応状況を、セキュリティプラットフォームを通じ、組織全体に渡り包括的、継続的に評価していくことで、法律、規制へのコンプライアンス対応が強化されます。
将来に備えたセキュリティ体制の構築
現在の体制や運用の改善に加え、セキュリティプラットフォームへの移行は、多くの組織で将来予測される課題への投資という側面もあります。
たとえば、人材不足です。現在、セキュリティ人材の不足が深刻になっています。とくに、多様なセキュリティソリューションを管理する組織にとって問題となります。使用するソリューションが多いほど、それを管理するスタッフが必要です。さらに、多くの専用ソリューションが、一般的なセキュリティ知識以上の専門的な知識を要求する事実が、この問題を複雑化しています。
セキュリティプラットフォームにより、運用を簡素化することで、スタッフ数の削減が可能になり、特定のソリューションに対する専門知識の必要性を最小限に抑えることができます。運用において、自動化とAI技術の利用を推進すれば、分析と問題解決のプロセスが加速され、省力化はさらに推進されるでしょう。専門性の高いスタッフはより付加価値の高い業務に集中できるようになり、習熟度の低いスタッフもAI技術などのサポートによりセキュリティ運用に貢献することが可能になります。
セキュリティプラットフォームにより、効率的かつ効果的なセキュリティ管理を実現することで、今後更に深刻化が予測されるセキュリティの人材不足や、攻撃対象領域の拡大への対応といった、厳しさを増すセキュリティ環境に対応できる体制を確立できるのです。
セキュリティ統合に向けた最良のアプローチとは
ITインフラや技術の移行と同様、セキュリティプラットフォームへの統合の理想的なアプローチは、既存の環境を活かし混乱を最小限に抑え、可能な限り強固なセキュリティを維持しながら進める、計画的で段階的な移行です。
このためには、サードパーティのセキュリティソリューションやサービスを統合できるセキュリティプラットフォームが不可欠です。既存のソリューションの利用を継続しつつ、必要に応じて新しいソリューションを採用することができます。
セキュリティ統合の成功には、サードパーティとの連携サポートするオープン性を備えたセキュリティプラットフォームを採用する以外にも、条件が必要になるでしょう。TechTargetは、セキュリティ環境を統合するための基盤として、ゼロトラストモデルを採用したセキュリティアーキテクチャを推奨しています。また、同じ記事では、セキュリティ統合に向けて、反復可能な文書化されたプロセスを開発すること、人的要素が必要な点を明らかにし、その要件に対応すること、そして組織のニーズに基づいた戦略的な技術決定を行うことといった提言が示されています。
攻撃対象領域は拡大し続け、複雑化していくでしょう。こうした脅威の展望を考えると、CISOとセキュリティチームに対するプレッシャーは、近い将来に緩むことはないでしょう。セキュリティプラットフォームによりセキュリティ統合を進めることは、組織がセキュリティのコントロールを取り戻す手段であり、また、脅威に対処していくための最良の体制を組織に提供することになるのです。
本記事は、2023年10月26日にUSで公開された記事Strategic Tips to Optimize Cybersecurity Consolidationの抄訳です。
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