第63回SMILE PROJECTレポート

気仙沼市・陸前高田市・石巻市 13年経過した被災地を訪ねて
スマイルプロジェクト第63回にして初参加、名古屋営業所勤務で愛知県から参加している簑輪が前半7/11(木)-12(金)の報告をいたします。

■復興と同じ年数だけ被災者も老いる現実「気仙沼市復興祈念公園」語り部:その場にいたおじいさん

最初の訪問地「気仙沼市復興祈念公園」で公園内に気仙沼湾を見下ろすベンチの前に立つと先にベンチに座っていたお年寄りから声を掛けられました。
「どこからきなすった?名古屋か?それは遠いとこからご苦労さんで」
「津波に流されたタンクの油に火がついて気仙沼湾は火の海で」近所にお住いのお爺さん当時を回想する話をしていただきました。
「近くに買い物に行けるスーパーが無くなってしまった。被災者も老いるんだよ復興もそのことを考えてやらないと」
はるか遠くにある大手スーパーの看板を見て「手押し車を押して歩く)わしの脚(であそこまで何時間かかると思うんだ?」
気仙沼市復興祈念公園には震災犠牲者の名前が刻まれた銘板プレートがあります。
「あそこに名前が載ってない人が400人ほどいる。遺族の了承が無いと書けないんだ」
現地に行ってみないとわかない聞いてみないとわからない被災地の現実を、いきなり最初の訪問地から知ることが出来ました。

■娘はいま中学の吹奏楽部でトランペットを吹いてます 「旧米沢商会ビル」語り部:米沢さん

次の訪問地は当スマイルプロジェクトレポートで何度も報告されている震災遺構「旧米沢商会ビル」の米沢さん。
震災当時店舗に米沢さんと一緒にいらっしゃった米沢さんのご両親と弟さんは避難場所に指定されていた体育館に逃げその体育館ごと津波に流され、残念ながら犠牲者となってしましましたが、米沢さん本人は3階建ての店舗自社ビルに残り屋上のさらに上の煙突先端に乗り、周りを濁流に囲まれながら紙一重で生き残った実演付きの生々しい体験談です。
私は今回初参加ということで同じ煙突に登り津波に耐えた米沢さんと同じ体勢をしてリアル体験をさせていただきました。
その横で、当時米沢さんが手持のカメラで撮影したという実際目の前を流れていた濁流映像をタブレットPCで見せていただきました。
煙突に登って津波をしのぎ波が引いた後から救出されるまで寒波の中で生き延びた米沢さんの知恵と行動力にも感心しました。
ご説明に使うクリアファイルには娘さんの幼い時の写真もあり、そして最後におっしゃった今の娘さんについて。
「娘はもう中学生で生意気になりまして、今は吹奏楽部でトランペットを吹いているんですよ。今コンクールやっていて今度は県大会に出るんですよ」
米沢さんが体験を語っていたころの苦痛と後悔に満ちた厳しい顔がこの時はほころんでやわらかい顔になっていました。
生き残って娘さんの成長を見届けられている喜びを感じました。

■ずっと継続して来ていただいていることがうれしいんです。「すがとよ酒店」語り部:女将 菅原さん

こちらも過去のスマイルプロジェクトレポートでも報告されている「すがとよ酒店」自宅店舗は津波で壊滅し目の前でご主人を流され義理のご両親も自宅店舗で無くされる。
2重3重の悲しみと苦難に耐えて4代目となるご子息とお店を復興させた女将さんの力強さを感じました。
復興したお店は酒店だけではなくグランドピアノを店舗2Fに設置しイベントを行い文化を発信する場として、
女将さんご自身は語り部として全国を飛び回るお忙しい毎日でお休みを取れるようになったのは6月からだそうです。
「ずっと継続して来ていただいていることがうれしいんです。来てくれるだけでいいんです」
体験談を語っていただいた中で、今回とこれからにもつながるスマイルプロジェクトで最も重要な一言が女将さんから出ました。
活動は続けていくということが本当に大事なんだということをここで実感しました。

■ここでグランドゴルフされている方は被災された方が多いんですよ 震災遺構・伝承館(旧気仙沼向洋高校)語り部:今川さん

見学地気仙沼市が保存する震災遺構伝承館の旧気仙沼向洋高校の前には青々とした芝生がありそこでグランドゴルフを楽しむ人達が見えました。
震災遺構とグランドゴルフ場という何とも対照的な風景を見ながら伝承館に入り旧気仙沼向洋高校を見学しました。
被災した当時のがれきや内部の様子を出来るだけ残して校舎内部からも見学ができるようにした貴重な施設で、1Fから順番に上がって屋上まで見学出来ました。
学校の4Fまでクルマなどのがれきを押し上げた津波の高さと破壊力にあらためて驚かされました。

当時の気仙沼向洋高校には生徒がおらず、学校校舎には入試答案を守るように指示され残った教職員の方20名だけだったそうです。
校舎に残った先生は屋上まで上がり無事だったそうですが、近所で指定避難場所の高台に逃げた方50名ほどが想定外の高さの津波にさらわれなくなったそうです。
語り部今川さんいわく生存に必要なのは「知識」+「情報」+「行動」ということで、ほかにも今川さんから当時の様子を事細かくかつ客観的にご説明をいただきました。
今川さんはかつて記者さんだったようで、今(2024年7月当時)は現職の市議会議員さんだそうです。
伝承館の前にはかつてがれきの焼却場があったそうで、その跡地をグランドゴルフ場として近隣の皆さんの憩いの場として活用しているそうです。

■私も愛知県出身なんです 桜植樹ボランティア活動「桜ライン311」スタッフ:嶋村さん、太田さん

今回の訪問目的の一つは、過去のスマイルプロジェクト植樹した桜の成長を妨げる木の周りに生える草の「草刈り」でした。
現地に到着しますと、目的の「草刈り」場所に入る為の「草刈り」を桜ライン311さんにしていただいてました。
よって私たちの仕事は草刈りよりも桜の苗木の上から覆いかぶさる蔓を払い更にその蔓を運んでくる竹を刈ること」でした。
桜ライン311のスタッフ太田さんは愛知県のご出身で、学生時代インターンで愛知と東北を行き来いるうちにここに移住してしまったそうです。
愛知から参加している私とは不思議なつながりです。
下を向いて鎌を振るうことを想定して来ましたましたが、まさか上を向いて高枝切りばさみ振るう作業になるとは意外でした。
2時間の作業時間をめいっぱ蔓払いと竹刈りに費やし、きれいなった桜の苗木のまわり
せっかく植えた桜の苗木もメンテナンスが育たない。桜を植えてそれで終わりではない手入れし続けることの重要さを感じました。

日程後半 7/13(土)-14(日)は、5回目の参加となる白銀よりレポートいたします。

■3日目

13日(土)は宮城県石巻市へ移動し、認定こども園「いしのまきセントラルプリスクール」にてほぼ1日かけて遊具の設置を行いました。
本プロジェクトでは過去数回にわたり特定非営利活動法人「プレイグラウンド・オブ・ホープ(以下、POH)」ご協力のもと、神奈川県を中心に遊具の設置等を行って参りました。私は第49回の活動でグラウンドの設置を行いました。

今回は当社ボランティアとして初めて東北での遊具設置の活動となります。宮城県はスマイルプロジェクトでこれまで何度も足を運んだ地であり、また、今回の認定こども園はPOHの活動趣旨に賛同し震災後に遊具設置の機会を与えて頂いた社会福祉法人「夢みの里」が今年春にオープンした施設で、我々トレンドマイクロ、POH共に思い入れのある場所での活動となりました。

作業は、園の先生方にもお手伝い頂きPOH、当社メンバー混成で少数のチームに分かれ、滑り台や上り坂などがついた複合型遊具1つと座って前後左右に揺れるスプリング遊具2台の設置を行いました。
当日は晴れ、東北の沿岸地域は東京より涼しいものの午後の気温が上がる時間帯は汗だくになりながらの作業となりました。途中途中で適宜休憩と水分補給、お昼ご飯を取りながら9時半から16時頃まで作業を行い、複合型遊具は完成、スプリング遊具は土台のセメントが固まるのを待つところで作業を終えました。

私は最初スプリング遊具の組み立てと土台をセメントで埋める作業を行いました。見た目は単純に見える遊具ですが、スプリングの固定具が思う通り取り付けられず思わぬところで苦労しました。次に事前に掘られた穴へ遊具を置きコンクリートを流し込むのですが、遊具を水平にするところでまた一苦労ありました。
その後、一袋20~25㎏の砂利入りセメント2,3袋と水を大きなバケツに入れ電動ミキサーで撹拌して流し込む作業を数回繰り返し固まるのを待つところで、複合型遊具の組み立て作業に加わりました。その段階では滑り台、ハシゴ、クライミングウォールなど各ブロックごとに組みあがっていたため、それらを組み合わせる作業を手伝いました。十分に安全性が考慮された設計の遊具ですが、上りハシゴの隙間から落ちないように追加の板を取り付けたり、1段目が少し高いため踏み台を急遽作って取り付けるなど、これまで多くの遊具を設置してきたPOHの方々の知識と経験は流石だと思いました。

複合型遊具が完成したところで作業を終え、園児、親御さん、先生方へ完成お披露目と食べ物の提供を行いました。早速、園児が遊具で遊んでいる姿を見てやりがいを感じました。

■4日目

14日(日)は帰京する日ですが、新幹線の時刻を遅らせて震災遺構として保存されている石巻市立大川小学校と日和山公園を訪問しました。大川小学校はスマイルプロジェクトで過去に数回訪れていますが、私自身は初めての訪問でした。
震災被害やその後の動向についてニュースなどである程度知っていましたが、実際に見て感じることの重みは全く違いました。何も知らずに行くと、校舎周辺は農場や空き地ばかりでなぜここに小学校が立っていたのだろうと不思議に思いますが、震災前は人が住む集落があったことを隣に立つ伝承館で知りました。
安全なはずの小学校で起きた事を忘れることなく自分の教訓としたいと思います。

次に石巻漁港を一望できる日和山公園を訪問しました。小高い崖からの眺めはとても良いのですが、設置されている案内板には震災当時の映像としてしばしば放送される場所とあり、確かに見覚えのある手すりや階段でした。今は震災遺構の門脇小学校の先に復興祈念公園が広がり海岸へと続いていますが、公園の丘には「一丁目の丘」といった地名がつけられており、ここも震災前は町があった所なのだとしみじみ思いました。
この後、途中で昼食をとりながら仙台駅へ向かい、新幹線に乗り無事帰京しました。

最後に、会社のボランティア活動として参加させて貰えることに改めて感謝したいと思います。また、ここまで触れていませんでしたが、いつも美味しい料理と心地よい湯の明海荘さん、全日程の移動と短い時間ですが遊具設置の手伝いまでして頂いた本吉タクシーさんにもお礼を述べたいと思います。
何度か自社のボランティア活動に参加して私が思うことは、共通の目標があれば初めて会う人とも協力できること、誰もが能動的であること、こう書けば確かに当たり前のことですが仕事でそれが出来ているかと問われると、常に出来ているとは言い切れない部分があると感じます。私にとって日常業務から離れてボランティア活動をすることは自分自身を見つめなおす良い機会になっています。また、訪れた場所や出会った人々のことを時々思い出しては、今どうしているのか、遊具で最初に遊んだ子はどんなふうに成長したか、桜は咲いたか、など、また訪れたいと思うことばかりです。ですが、出来れば今まで参加したことのない社員の方にこそスマイルプロジェクトへ参加して頂きたいと思います。そしてこの活動がこれからも続くことを願うばかりです。

活動日程

7/11(木) 1日目
東京から気仙沼へ移動
復興祈念公園 訪問
陸前高田 米沢商会 語り部
気仙沼 すがとよ酒店 語り部

7/12(金) 2日目
気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館(旧向洋高校) 見学
陸前高田 桜ライン311 植樹した桜周辺の草刈り

7/13(土) 3日目
いしのまきセントラルプリスクール 遊具設置作業

7/14(日) 4日目
震災遺構 石巻市立大川小学校 訪問
日和山公園と復興祈念公園 訪問
帰京

日程:2024年7月11日~14日