AWS re:Invent 2023 出展レポート:生成AIとセキュリティの関係性

AWS re:Invent 2023 出展レポート:生成AIとセキュリティの関係性

公開日
2023年12月27日

まとめ

AWS re:Invent 2023の最重要トピックのひとつといっても過言ではない生成AI。
Amazon Qをはじめ、今後ビジネスシーンでの活用が見込まれる生成AIですが、同時にサイバー犯罪者にとっても非常に有益なテクノロジーであることを忘れてはいけません。
トレンドマイクロでは「サイバー犯罪者は生成AIをどう使うか」というリサーチや、「生成AIを活かしたセキュリティ」としてTrend Vision One™ をご提供しています。

はじめに

みなさん、こんにちは。
トレンドマイクロでクラウド環境向けのセキュリティ製品のマーケティングを担当している岡本です。
AWS re:Invent初参加ということで、アメリカ入国や英語力に不安を感じつつの渡米でしたが、Keynoteを中心に生成AI関連のアップデートラッシュに大興奮する結果になりました。
それと同時に「生成AIにセキュリティを絡めた最新情報を日本に持って帰りたいなぁ」という期待をもって自社セッションに参加してきましたので、その内容をこの場でご報告していきたいと思います。

Keynoteについて

今年のre:Inventでは、生成AIに関連する新サービスのリリースや既存サービスのアップデート、ユーザ企業における活用事例など様々な情報が発表されました。

AWSは生成AI関連のサービスをインフラ、ツール、アプリケーションという3つのレイヤーに分割。レイヤーごとにAmazon SageMakerやAmazon Bedrockといった既存サービスのアップデートや新サービスのリリースが発表されました。

11/29のKeynoteにおける生成AI関連サービスのアップデート紹介の一場面

11/29のKeynoteにおける生成AI関連サービスのアップデート紹介の一場面

多くのアップデートの中でも特に注目を集めたのがAmazon Qという新サービスです。
Amazon Qはチャット形式でユーザの質問に回答してくれる生成AIアシスタントサービスで、AWSの生成AIスタックの中ではアプリケーションレイヤーに位置づけられる新サービスです。

生成AIの活用と聞いて「よし、じゃあ明日からAmazon SageMakerを使って機械学習モデルを構築して~」となる企業はそう多くはないと思います。
それに対してAmazon Qの場合は、AWS Management Consoleにログインするだけで誰でも使える、しかもチャット形式で利用できるという使いやすさも注目を集めた理由のひとつだろうと感じました。

興奮しすぎてAmazon Qに慣れない英語で質問を投げた様子

興奮しすぎてAmazon Qに慣れない英語で質問を投げた様子

開発担当者にとってAmazon Qは、新たにコードを書く際はもちろん、秘伝のソースと化したコードの解読を助けてくれる非常に心強いパートナーになるかもしれません。
運用担当者にとっては新システムの構築やトラブルシューティング時に、コールセンターのオペレーターにとってはお客様との対応をスムーズに進める際の優秀なアシスタントになる可能性があります。

AWS re:Invent期間中に発表されたAmazon Q in Connectのように、Amazon Qは今後Amazon Q in 〇〇といった形でAWSの各種サービスとの連携がより密になっていくのではないでしょうか?

また、生成AIは「どうやって学習させていくか」がキモになりますが、Amazon Qはユーザの情報を学習に利用しないという発表もあり、セキュリティを強く意識しているのも興味深いポイントでした。

生成AIのメリットを享受するのは企業だけ…?

Amazon Qをはじめ、今後ビジネスシーンでの活用が見込まれる生成AIですが、同時にサイバー犯罪者にとっても非常に有益なテクノロジーであることを忘れてはいけません。
トレンドマイクロはAWS re:Invent 2023内のセッションで「サイバー犯罪者は生成AIをどう使うか」「生成AIを活かしたセキュリティ」についてご紹介しました。

サイバー犯罪者は既に生成AIを活用した攻撃手法を積極的に採用しています。
わかりやすい例として、セッションでは生成AIを悪用した非常に巧妙なビジネスメール詐欺をご紹介しました。
生成AIにいくつかの条件を与えるだけで、ビジネスメールとして整った体裁、効果的な文面を瞬時に用意することができます。
さらに生成AIの多言語対応を悪用すれば、自分の母語ではない言語であっても従来の翻訳ツールにありがちな不自然さを感じさせないメールを簡単に作成できるようになっています。

ToddというCFO向けに100単語程度で新しいCRM契約への承認依頼を求めるメールを作成するよう生成AIに指示している様子

ToddというCFO向けに100単語程度で新しいCRM契約への承認依頼を求めるメールを作成するよう生成AIに指示している様子

指示に沿って生成AIが作成したメール文面、従来のビジネスメール詐欺にありがちな不自然な言い回しや誤字などは見受けられない

指示に沿って生成AIが作成したメール文面、従来のビジネスメール詐欺にありがちな不自然な言い回しや誤字などは見受けられない

生成AIを悪用したビジネスメールは、これまでビジネスメール詐欺の対策としてよく言及された「不自然な日本語」「ビジネスメールらしくない文体」といった判別方法では対応しきれません。
セキュリティベンダーは不審なURLやマルウェアの検出にとどまらず、AIや機械学習を利用してメール文面のトーンや微細な変化などからリスクを検知できるような検出力が求められるようになってきます。

さらに音声やビデオを悪用したなりすましやディープフェイクの高度化や、それらを既存の攻撃に組み込んだより高度な攻撃シナリオについてもセッション内で紹介しました。

高額な請求処理の際は電話での確認が必要という企業内のルールを悪用するビジネスメールを生成AIで作成→メール内の電話番号に電話をかけると偽の音声やビデオに接続→あたかも正規の担当者が承認したかのように錯覚させて金銭を振り込ませるという手口

高額な請求処理の際は電話での確認が必要という企業内のルールを悪用するビジネスメールを生成AIで作成→メール内の電話番号に電話をかけると偽の音声やビデオに接続→あたかも正規の担当者が承認したかのように錯覚させて金銭を振り込ませるという手口

こうした例からもわかるように、攻撃者にとっても生成AIは非常に重要なテクノロジーと言えます。
生成AIを悪用することで、これまで以上に高度な攻撃を今までよりも簡単に実行できるようになるのです。

セキュリティにも生成AIを活用してみませんか?

当然ですが、セキュリティにとっても生成AIは非常に心強く効果的なテクノロジーです。
生成AIを悪用した攻撃による被害を防ぐためには、サイバー犯罪に対抗する我々も生成AIを活用していくことが重要です。

AI influencing cybersecurity techniques

トレンドマイクロのセッションでは、セキュリティにおける生成AI活用の一例としてTrend Vision OneのCompanionという機能をご紹介しました。

Trend Vision Oneは、企業が平時からリスクの把握、評価、軽減を行うための「アタックサーフェスリスクマネジメント」と、マルウェア等の脅威や、脅威とは断定できない不審な挙動の抽出を行い、影響範囲や感染経路の特定、攻撃の全体像の可視化など、迅速な対処を行うことを支援する「XDR」機能をご提供します。
(Trend Vision Oneの1サービスであるTrend Vision One Endpoint SecurityはTrend Micro Cloud One – Workload Security™ の後継製品です)

CompanionはTrend Vision Oneのコンソール上で提供される生成AIを活用したチャット形式のアシスタント機能です。CompanionにTrend Vision Oneが検出したアラートや対処方法について質問することで、アラートの解説や対処方法のアドバイスを提供します。

赤枠で囲った部分がTrend Vision OneのCompanion機能、アラートの解説やTrend Vision Oneが検出したコマンドやスクリプトの解説も対応

赤枠で囲った部分がTrend Vision OneのCompanion機能、アラートの解説やTrend Vision Oneが検出したコマンドやスクリプトの解説も対応

イメージとしてはセキュリティに特化したChatGPTといったところでしょうか。
Companionを介してセキュリティ専業ベンダーのトレンドマイクロが持つスレッドインテリジェンスをわかりやすくご活用いただけます。

Companionを活用することで、担当者間の経験値の偏りを是正し、担当者のスキルレベルの差を埋めてインシデントへの迅速な対処をご支援します。
CompanionはTrend Vision Oneをご利用中の方であれば追加のモジュールなどをインストールすることなくご利用いただける機能です。
システムに対して変更を加えることのない取り入れやすい機能ですので、ぜひご活用いただければと思います。

上述したトレンドマイクロセッションはYouTubeからご視聴いただけます!
攻撃側の手法など非常に面白い内容になっていますので、是非ご視聴ください!!

ちなみに…

今回トレンドマイクロはエメラルドスポンサーという最上位のスポンサー枠で出展しており、AWS re:Invent 2023の期間中は生成AI関連のセッション以外にも2つのセッションをご用意していました。
それらもYouTube上で公開しておりますので、是非ご視聴いただけますと幸いです。

・経営層へクラウドセキュリティの話をする際のアプローチに悩んだことのある方におすすめ

・Amazon S3のセキュリティのユーザ事例(Amazon MGM Studios様)

また、セッション以外でExpo会場にも展示ブースを出展。
展示ブースではTrend Vision OneのデモやTrend Vision Oneを利用したクイズ形式のイベントを開催し、日本からのお客様にも多数お越しいただくことができました。

弊社ブースのTrend Vision Oneを利用したクイズイベントの様子

弊社ブースのTrend Vision Oneを利用したクイズイベントの様子

最後に

かなり内容を絞りましたが、ここまでAWS re:Invent 2023の生成AIとセキュリティに関する情報をご紹介してきました。
今後ビジネスシーンで欠くことのできない生成AI。Amazon Qをはじめ、AWSが提供する生成AIサービスはもちろん、サイバー犯罪における生成AIの悪用にも注目していくべきだと強く感じました。
もちろん我々トレンドマイクロも、生成AIを筆頭に最新のテクノロジーを活用したセキュリティ製品をご提供してまいりますので、今後もアップデートにご期待ください!

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