クラウドリフトとは?クラウドシフトとの違いやメリットを解説
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公開日
2023年4月24日
(更新日 2025年2月13日)
既存のシステムをクラウド環境へと移行する場合、複雑な移行プロセスが必要なケースが少なくありません。そのようなクラウド環境への移行をスムーズに進めるための手法として注目されているのが、クラウドリフトです。
この記事では、クラウドリフトとクラウドシフトとの違いやクラウドリフトのメリット、注意点についてわかりやすく解説しています。クラウドリフトを行う際のポイントもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
クラウドリフトとは、既存のシステムなどをオンプレミス環境からクラウド環境に移行すること
クラウドリフトとは、既存のシステムやアプリケーションをオンプレミス環境からクラウド環境に移行する手法の1つです。既存のシステムのコードや設定を改変せずに行えるため、短期間でスムーズにクラウド環境へ移行できます。
また、クラウドリフトの手法を用いることにより、運用コストの低減やリソースの最適化といった効果も期待できます。そのため、クラウドリフトはクラウド環境への移行を検討している企業にとって有力な選択肢といえます。
クラウドシフトとの違い
クラウドシフトは、既存のシステムやアプリケーションを改修または新規構築し、オンプレミス環境からクラウド環境に移行することを指します。クラウドリフトが既存のシステムをそのままクラウド環境へと移行することを前提としているのに対して、クラウドシフトはシステムの刷新とクラウドに最適化したクラウドネイティブへの変更を前提としている点が違いです。
クラウドシフトは、クラウド環境に合わせてシステムを改修・構築することから、クラウド環境のメリットを最大限に引き出せるという強みがあります。なお、クラウドシフト、クラウドリフトのいずれもメリットがあるため、自社に適した手法を選ぶことが重要になるでしょう。
クラウドリフトのメリット
クラウドリフトのメリットには、コスト低減やシステム拡張の柔軟さなどがあります。ここでは、クラウドリフトの主な4つのメリットを見ていきましょう。
コストの低減が期待できる
コストの低減が期待できることは、クラウドリフトのメリットの1つです。
クラウドリフトは、既存のシステムをクラウド環境へと移行する際、自社でサーバなどの機器類を購入する必要がありません。また、料金体系は従量課金制のため、初期投資を抑えて導入が可能な上、ハードウェアの保守・運用コストも低減できるため、長い目で見た場合にトータルのコストを抑えられることが期待できます。
システムの拡張が柔軟にできる
自社にとって必要なシステムを柔軟に拡張できる点も、クラウドリフトのメリットです。
オンプレミスでシステムを拡張する場合は、新たな設備投資や人的リソースの確保が必要になることがあります。一方、クラウドシステムであれば、大規模な投資や人的リソースを確保する必要性が比較的少なく、サービス提供企業のWebアプリケーション上から設定するだけでシステムの拡張が柔軟にできるため、効率的な運用が可能です。
BCP対策にも活用できる
クラウドリフトのメリットは、BCP対策にも活用できることです。
BCP(Business Continuity Plan)とは、自然災害やサイバー攻撃といった非常事態に備えて、損害を最小限に抑えつつ早期復旧を図るために立てておく計画のことを指します。クラウドシステムには災害復旧機能やバックアップ機能が備わっているものが多く、適切なBCP対策を可能にする仕組みが豊富です。こうしたクラウドシステムの強みを活かせることは、クラウドリフトを実施するメリットの1つといえます。
物理的なハードウェアが不要になる
物理的なハードウェアが不要になり、それらを自社で管理する必要がなくなることもクラウドリフトのメリットとして挙げられます。
サーバの設置スペースやハードウェア管理が不要となり、設置や保守にかかる負担が軽減されます。また、物理的なハードウェアの障害対応に要する手間やコストも削減できることから、IT部門がシステム開発などにリソースを集中させやすくなるでしょう。
クラウドリフトにおける注意点
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クラウドリフトには多くのメリットがある一方で、注意点もあります。クラウドリフトにおける注意点は下記の3つです。
クラウドの利点を十分に活用できない
クラウドリフトにおける注意点は、クラウドの利点を十分に活用できない可能性があることです。
クラウドリフトは、既存のシステムをそのままクラウド環境へ移行する手法ですが、それだけでシステムが自動化されたり便利になったりするわけではありません。そのため、業務効率化や生産性向上といったクラウドならではのメリットを活かしきれない場合があります。クラウドの利点を最大限に活用したい場合は、システムの改修や再設計によって、自社の要望に合ったシステムを実現できるクラウドシフトの導入を検討することが必要です。
保守や運用の手間がかかる
クラウドリフトでは既存のシステムをクラウド環境へ移行するため、ハードウェアに関する保守・運用は不要になりますが、OSやミドルウェアの保守や運用については自社で行わなくてはならないことにも注意が必要です。
例えば、システムのバックアップやアップデートといった管理者が担うべき保守・運用の手間は引き続き発生します。また、システムの構成そのものは現状どおりとなるため、将来的に大規模な改修が必要になる可能性も考えられます。よって、クラウド環境への移行後も一定の運用負担が継続するでしょう。
既存のシステムとの連携が難しい
既存のシステムとの連携が難しいことも、クラウドリフトにおける注意点の1つです。
クラウドリフトによって、すべての既存システムをクラウド環境へ移行できるとは限りません。一部のシステムがオンプレミス環境に残る場合、クラウドに移行したシステムとの連携が課題となることがあります。場合によっては従来よりも使い勝手が悪くなり、業務に影響を及ぼす可能性もあります。
クラウドリフトを行う際のポイント
クラウドリフトをスムーズに進めるには、どのような点に留意する必要があるのでしょうか。クラウドリフトを行う際の主なポイントを詳しく見ていきます。
現状の分析と評価を行う
クラウドリフトを進めるには、まず自社システムやアプリケーションの現状を詳細に分析・評価することが重要です。
現状のIT資産とセキュリティポリシーを再確認し、クラウド環境へ移行すべきシステムを優先順位付けします。既存のシステムをそのままクラウド環境へ移行するといっても、あらゆるシステムやアプリケーションをクラウド環境へ移行できるとは限りません。クラウド環境へ移行するメリットを十分に得られるポイントを絞っておくことが大切です。現状の分析・評価を通して、なぜクラウド環境へ移行する必要があるのか、それによってどのような効果が期待できるのかを明確にしておきましょう。
詳細な移行計画を立てる
クラウド環境へ移行すべきシステムやアプリケーションが決定したら、詳細な移行計画を立てましょう。
クラウドリフトを実行する上での戦略やスケジュール、ステークホルダーの役割分担などを明示することが重要です。クラウドリフトを実行することによって生じる可能性のあるリスクの評価と、リスクを最小限に抑えるための対策を講じておく必要があります。クラウド環境への移行の概要を示すロードマップを作成し、プロジェクトの全体像を可視化するのがおすすめです。
適切なコスト管理を行う
クラウドリフトでは各フェーズで費用が発生するため、あらかじめ総予算を把握した上で、予算内での実施に向けた適切なコスト管理体制を整えておく必要があります。
クラウドサービス提供企業の料金体系を確認するほか、どの段階でどのような費用が見込まれるのかを事前に整理することが重要です。なお、コスト管理においてはクラウドサービス導入時に必要な費用だけでなく、運用開始後のランニングコストについても考慮しておかなくてはなりません。運用開始後に発生するタスクを整理し、必要な運用体制を検討するとともに、予算内で無理なく運用可能かどうかを確認しておきましょう。
テスト環境で検証を行う
クラウドリフトを行う際、事前にテスト環境を構築してシステムの動作やパフォーマンスを検証する必要があります。
テスト環境でシステムの検証を実施することで、不具合を事前に発見できる場合があるため、予期せぬトラブルやダウンタイムが生じるリスクの回避が可能です。また、テスト環境において既存のシステムとクラウド環境との相性を確認し、課題となる点を把握することも重要なポイントの1つとなります。
セキュリティ対策を強化する
クラウド環境に適したセキュリティ対策を講じておくことは、クラウドリフトを行う際に組織やデータを脅威から保護する上で欠かせないポイントです。
クラウド環境では、常時インターネット接続が必要なため、データへの外部アクセスが増え、サイバー攻撃のリスクも高まります。そのため、クラウドサービス提供企業のセキュリティ対策を確認することに加え、自社においてもセキュリティ対策を強化する必要があります。
クラウドリフトはセキュリティ対策の強化もセットで推進しよう
クラウドリフトは、既存のオンプレミスシステムをクラウド環境へとそのまま移行する手法です。クラウド上で新たにシステムを構築するのではなく、既存のシステムをクラウド上で再現するため、コストの低減や移行期間の短縮といった効果が期待できます。一方で、クラウドの利点を十分に活用できない可能性があるほか、保守・運用の手間は引き続き生じる点に注意しましょう。また、既存のシステムとの連携が困難になることも想定されるため、事前に詳細な移行計画を立てた上でクラウドリフトに臨む必要があります。
クラウドリフトを推進する際には、クラウド環境に適したセキュリティ対策を講じておくことが求められます。トレンドマイクロが提供するクラウドセキュリティプラットフォーム「Trend Vision One」は、クラウド環境におけるセキュリティ対策に適したソリューションです。サーバ・コンテナ・ストレージなどのワークロードに対するサイバー攻撃をブロックします。また、クラウドとオンプレミスを横断したインシデントの分析と迅速な対応を支援することにより、脅威の検知・対応機能の強化を図ることが可能です。クラウド環境に適したセキュリティ対策を講じ、リスクマネジメント能力の強化を図りたい場合は、ぜひTrend Vision Oneをご活用ください。
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